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一杯のお茶で国際交流
12 July 2026 | By 盧彦廷 | SISU
去年の9月、私は筑波大学の交換留学生として来日しました。そして今年の3月からは、つくば市国際交流協会で多文化共生コーディネーターとしても活動しています。
先日、私が企画し、講師を務めた「国際交流のための中国茶文化体験イベント」が開催されました。当日はつくば市在住の方々に向けて、私の故郷である中国・雲南省のお茶文化についてご紹介し、実際にプーアル茶の「生茶」と「熟茶」の2種類を淹れて飲み比べを楽しんでいただきました。会場には、お茶請けとして定番の瓜子(ひまわりの種)や落花生も用意し、イベントが始まる前からどこか中国の家庭の茶卓にいるような、温かく落ち着いた雰囲気が漂っていました。
私の故郷・雲南省は、中国の南西部に位置し、ベトナム、ラオス、ミャンマーと国境を接しています。山が多く、標高差も大きいため、一つの省の中に寒帯・温帯・熱帯の気候が共存しています。こうした複雑な地形と豊かな自然環境が、雲南のお茶を育てる土台になっています。
今回紹介したプーアル茶は、雲南省の大きな茶葉(大葉種)を原料として作られる後発酵茶です。かつて雲南のお茶は、「茶馬古道」と呼ばれる交易路を通って、チベットや東南アジアへ運ばれていました。この道は「南のシルクロード」とも呼ばれ、お茶を運ぶだけでなく、人々の暮らしを支え、地域と地域を結ぶ役割も果たしてきました。
イベントの最後には、私の実家にある茶盤や茶具、そして家族が日常的にお茶を淹れている動画も紹介しました。雲南では、家に茶盤や茶具があるのはごく当たり前の風景です。誰かが家に来たら、まずは「お茶をどうぞ」と淹れる。特別な用事がなくても、茶卓を囲んでいるうちに自然と会話が始まります。私にとってお茶は、単なる飲み物ではなく、人と人の心をつなぐ存在です。
一方で、最近の中国では若い世代のお茶の楽しみ方も大きく変わりつつあります。伝統的な茶卓を囲んでゆっくりお茶を淹れるよりも、友人と街に出てスタンドでミルクティーを買って飲むことの方が身近になっています。雲南発のティーブランド「霸王茶姫(CHAGEE)」のように、中国茶をベースにした新しいスタイルの茶飲料は若者の間で大人気です。形は変わっても、「お茶を飲みながら人と話し、同じ時間を共有する」というお茶の役割は、今も変わらず受け継がれているのかもしれません。
そんな変化を前向きに感じる一方で、少し寂しさを覚えることもあります。便利で手軽な飲み物が増える一方で、若い世代が伝統的な茶卓で過ごす時間から、少しずつ離れているようにも思うからです。茶葉に触れ、香りを楽しみ、お湯を注ぎながら味の変化を味わう――そのひとときには、手軽な飲み物とはまた違った豊かさがあります。
茶文化は、ただ古い作法を守るためだけのものではありません。茶葉が育った土地のこと、道具の使い方、お茶を淹れる所作、そして何より「人をもてなす気持ち」まで含めて、長い時間をかけて受け継がれてきた大切な文化です。
だからこそ、若い世代にも、ミルクティーのような新しいお茶の楽しみ方を大切にしながら、時には茶葉そのものに触れ、自分の手でお茶を淹れてみてほしいと思います。その背景にある文化を知ることは、自分の暮らしや故郷を見つめ直すことにもつながるのではないでしょうか。
今回の文化交流イベントは、「話を聞いて雲南に行ってみたくなった」「実際に茶山を見てみたい」「茶餅づくりを体験してみたい」「現地でミルクティーも飲んでみたい」といった声をいただき、とても嬉しく感じています。
一杯のお茶はとても小さなものですが、そこには故郷の自然、人々の暮らし、そして人と人との温かい結びつきが詰まっています。これからも自分にできる発信を続け、より多くの方に雲南や中国の豊かな茶文化に触れていただけるよう、頑張っていきたいと思います。
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