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画面の向こうと手のひらのあいだで
15 November 2025 | By 潘文静 | SISU

ここ数年、都市の生活様式は目に見えて変化している。若者たちの買い物はもはや路地の露店や古物市での手探りだけではない。転転や閑魚といったフリマアプリでの取引が日常化し、スマートフォンの画面の上で古い皿もラジオも、遠くの街にある一点物も簡単に手に入るようになった。それでもなお、時折、私は実際の市集の匂いや物の冷たさを確かめたくなり、週末の早朝に薄暗い通りを歩く自分を見つける。ネットで買うのと、目の前で物と向き合うのとでは、受け取る温度がまるで違うからである。
アプリ経由での購入が主流になったことで、旧物は新しい流通経路を得た。写真が整えられ、説明文が丁寧に書かれ、評価の星が並ぶ。画面の向こう側にいる売り手と短いメッセージを交わすだけで、取引は完了する。便利で早い。それが理由で、人々はますます手軽に古いものを暮らしの一部に取り込めるようになった。しかし、その一方で、画面に表示される静止画は物の時間性や匂いを伝えきれない。そのゆえ、私は時折、実物を見に行く。写真と実物の間にはいつも、説明できない距離があるからである。
この数年で変わったのは、人々が旧物に対して抱く姿勢であると思う。かつては単に安く手に入る代替品であったものが、いまは時間の匂いを運ぶ物語の担い手として見られるようになった。アプリで流通することで、希少性や作り手の履歴が可視化され、旧物はまた別の価値軸を得た。けれど、それでもやはり、私が欲しくなるのは、画面越しの完璧に整えられた一枚の写真よりも、物の表面に残る不完全さである。不完全さの中にこそ、想像の余白が宿っているからである。
ある古物店の主人は、私にこう言ったのを覚えている。「若い人は物に『誰かの痕跡』を求めている。新品にはない『誰かの時間』があるんだ」と。その言葉のなかに、本質的な理由が隠れていると思う。日進月歩の時代にあって、人は自分の速度を取り戻すための拠り所を欲している。旧物はその拠り所になり得る。古い鍵の重みや、欠けた茶碗の縁の滑らかさは、時間を引き受けた証であり、それが人を静かに落ち着かせるのである。
それでも私は、完全にアナログ回帰を求めているわけではない。デジタルと旧物の関係はむしろ共存の形をとっている。アプリで見つけた一点物を、実際に市集で確認してから取引する人は多い。あるいは、市集で見つけた品を、後からアプリで見つけた情報と照らし合わせ、製造年代や由来を確かめることもある。ネットは旧物の入口を広げ、市集はその深みに触れさせる。二つが補い合うことで、個々人の物語の深度が増しているように思われる。
初冬の夕暮れ、市集の屋台の灯りがゆらりと揺れる。人々は袋を下げ、笑い声をこぼし、古い物を胸に抱いて帰路につく。ネットでの流通が生活を変えたこの時代にあって、旧物市集の存在は決して消耗品の市場への反動ではない。むしろ、それは変わりゆく日常の中で、自分のペースや感性を再確認するための小さな場所なのだ。私もまた、次に市集を訪れるときには、少しだけ立ち止まり、古い物が放つ微かな光をゆっくりと味わいたいと考えている。そこには、未来へと続く個人的な記憶の灯が確かにともっているのである。
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