菅原道真（すがわらのみちざね）は、平安時代の学者であり政治家だった。その学識と才能で右大臣にまで昇り詰めたが、藤原氏の陰謀によって讒言を受け、大宰府に左遷されてしまった。その後、道真は失意のうちに亡くなったが、彼の死後、京の都では自然災害や疫病が相次ぎた。特に雷による被害が目立ち、人々はこれを道真の怨霊によるものだと考えた。

そこで、朝廷は道真の怒りを鎮めるため、彼を神として祀ることにした。道真は学問の神として祀られるだけでなく、「雷神」や「怨霊鎮めの神」としても信仰されるようになった。この信仰の象徴が北野天満宮だ。

北野天満宮は、道真の亡き後、彼を祀るために947年に創建された。ところが、北野天満宮の由緒は、実は菅原道真の託宣と深く関わる伝説がある。「託宣（たくせん）」とは、神や霊が人間にメッセージを伝える行為を指し、主に巫女や特別な感受性を持つ人々を通じて行われた。道真の死後、まず文子という貧しい女に託宣があった。文子は京都の北野の地に小さな祠が建てたが、それだけでは不十分だとされ、五年後、近江国比良宮の少年「太郎丸」がまた道真の託宣を受け取った。「適した場所には松が生える」との神託どおりに松が生えたため、これを神の意思とみなして北野に正式な社殿が建てられたのだ。この「一夜松」の話は、古代日本の自然信仰や新しい神を迎える儀式と繋がっているとされ、北野天満宮の由緒を物語っている。

こうして菅原道真は、次第に怨霊としての恐れを乗り越え、知識や学問の象徴として永遠に人々の心に残り続けているのだ。現在、北野天満宮は学問の神として全国的に知られ、参拝客が絶えない。特に受験シーズンには学生や家族で賑わい、毎月25日に行われる「天神市」では骨董品や手工芸品が並び、地元の人々や観光客を楽しませている。また、春の梅花祭や秋の紅葉ライトアップなど、四季折々の自然美も楽しめる魅力的なスポットとして愛されている。