国際的な大都会である上海では、料理も多種多様です。上海料理といえば、上海の点心が海外に名が響いていることはよく知られている事実です。上海のあちこちには点心の老舗がいろいろと散在しています。その中で一番印象に残っているのが王家沙です。

王家沙本店は上海で最も賑やかな道である南京西路にあります。子供の頃に、時々におばあさんに連れられてその店にエビワンタンを食べに行ってもらったことがあります。スープの上に浮かび上がったワンタンの皮は薄くて透明で、中にはふっくらとしたえびの肉が見え隠れしています。ワンタンが出てくると、私はすぐに掬って口に運ぶのですが、おばあちゃんは「ゆっくり食べて、熱いので気をつけて」と優しく言ってくれました。それから彼女はワンタンを軽く吹いて冷ましてくれました。やっと食べることができました!　口の中でなめらかな皮と柔らかいえびの肉が混じり合って、とても美味しかったのです。 おばあさんが若い頃からこの店の常連客でした。1945年に王家沙の第1号店が開店しました。その年、おばあさんが7歳でした。1945年に申報の広告課課長であった姚子初が退職した後、点心市場に目を向けました。

王家沙は洗練された作り方ですぐに顧客を集めました。王家沙の看板メニューはエビ入りワンタン、両面黄(焼きそば)、焼きブタマンと豆沙酥饼(小麦粉を油でこねてあんこを入れて焼いた菓子)です。美味しい点心の真髄は代々受け継がれてきた技というところにあります。でも、銘菓にしても、定期的な改良が必要です。豆沙酥饼を作る時に、クリスピーな食感を求めるために、実験を重ねてベーキングパウダーを加え、油温を5～10度上げて、やっと今の看板メニューである豆沙酥饼を作り上げました。

 ほぼ100年の歴史を持った王家沙は見事な腕前で料理の味に厚みや広がりを与えるだけでなく、上海の人々の支持を獲得しました。

しかし、今、盛んだ王家沙も発展の道には紆余曲折がありました。1989年にケンタッキーフライドチキンとマクドナルドは上海の飲食産業市場に進出し始めました。西洋の食文化が大きく介入し、伝統的な飲食店に大きな衝撃を与えました。王家沙の蔡宏傑社長は新民晩報とのインタビューで、「当時、最も困窮している時に毎日の売り上げが一万元に達していないことを覚えています。多くの人が老舗はあまりにも古くて生命力がないんだと思っていました。しかし、老舗の古さは、弱みであり、強みでもあると思います。」このように、王家沙は革新の道を歩む最初の食品老舗になりました。21世紀から王家沙は「蝦兵蟹将」をテーマに一連の新製品を開発しました。例えば、蟹肉小籠、蟹肉元宵団子、そして今の定番料理の一つであるエビワンタンが作られました。また、店員さんはその場で上海蟹を解体し、顧客に食材の鮮度を示しました。王家沙の策略の正しさがすぐに証明されました。2006年の初め、王家沙の月間売上高はすでに10万元を突破しました。2006年、蟹肉元宵団子は上海市の金メダル点心に選ばれました。王家沙の点心の作り方は上海市の無形文化財にも選ばれています。

現在、変遷を経った王家沙は有名な菓子ブランドとして、中国香港、日本にも支店を開設しています。

おばあさんは今、年をとって足が不自由なので、よく本店のエビワンタンを食べに行くことができませんが、両親はよく王家沙の出前を取って、家族みんなでその美味しい味を味わっています。碗の中でワンタンはボートのように、長年の波風を乗り越えてもまだ落ち着いています。その中には職人が代々受け継がれできた見事な技術と、美食研究へのこだわりが込められているからでしょう。

王家沙の社長であった蔡立新は、「製品の品質を管理することは王家沙の伝統であり、料理の味のに磨きをかけることは王家沙の楽しみだ」と語りました。良い食材に心を込めて作ってこそ、最高の味が出るのです。王家沙はずっと伝統を守ると同時に、一部の伝統を破っています。新しいものを提案することを忘れないで、王家沙はやっと上海の人々がよく知っている老舗になりました。