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都江堰:自然ならぬ人間の巧みの極まり


02 December 2021 | By 賈思遠 | SISU

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 新型コロナの影響で、外出する度にあれこれ配慮するようになり、まして旅行となるとさらに苦労が重なる。時に筆者は自分がまだ故郷の四川にいて、心置きなく旅行できたのが恋しくてたまらなかった。四川中をいろいろと旅こそしたが、一番印象深かったのはやはり九寨溝と都江堰の二か所だと思う。

 九寨溝は四川北部のチベット族チャン族自治州にあり、1970年代に偶然に原住民のチベット人以外に発見されたという。無数の年月の気候変動及び地質の活動により、奇跡的にも100以上の沼や池が連なる景観となっている。また、石灰岩の成分が沈殿しているため、日中、夕方の日差しを受けて青、オレンジなど華やかな色を放ち、「絶景」と讃えられ、まさに自然の巧みが極まっている。

九寨溝の代表的なスポットの一つ「五花海」

 

 一方、都江堰を見るとさっきまでの華やかさが一気に薄れてしまう。四川省西部の都江堰市の岷江が成都平原に出るところに位置しており、名の通り、都江堰は「堰」であり、いわば水利施設である。自然と太刀打ちするために作られたとも言える。

水利施設「都江堰」

 

 

 確かに景観として九寨溝と比べればかなり見劣りはする。しかし、都江堰の本当の美はその景色よりも、その中に凝らされた人間の工夫にあると筆者は思う。2300年も前に作られた施設が、今となってもなお機能しており(後に改良あり)、周辺地帯に多大な便利をもたらしていることが、もう一種の奇跡のように思われる。

 都江堰の中洲が人工堤防として造られた。中洲の先端が「魚嘴」と呼ばれ、岷江を左の本流と右の灌江に分ける。「飛沙堰」で土砂を排出し、更に後ろにある細い導水路「宝瓶口」を通じて水を陸上の農田へと導くというのが大体の仕組みだ。まさに一石二鳥の工事で、ダムを作ることなく洪水の危険を防ぐことができ、水運の路線も確保したうえ、周辺地域の灌漑にも大きな便利さを与えた。工事を完成させた李氷と李二郎の親子を記念すべく、人々が後に「ニ王廟」を建て、二人を祀っている。

 2008年の四川汶川大震災において、被災地の中心部にある都江堰の状況もひどく懸念されたが、「ニ王廟」や歩道、建物が倒壊などして、被害は大きかったに対し、都江堰という施設自体にはほぼ無傷で、「魚嘴」に少しひびが入ったくらいだった(現在ほぼ修復されている)。当時この知らせを見ると筆者はいっそう古代人の知恵を偲ぶようになり、そしてそれがきっと時代を超えていつまでも受け継がれていくという確信に似た気持ちを覚えた。一方、自然の奇跡である九寨溝はいかにも脆くて、2017年の地震では甚大な被害を受けて以来、完全な修復ができず、現在での観光一部しか再開しておらず、その上厳しい入場制限がかけられている。

 景勝地の美は必ずしも視覚的なものとは限らない。人間の汗と工夫を凝らした美のほうがよほどタフで、たとえ形を変えてもその信念は伝えられていき、「美」でいられる。もし四川に旅行する機会があれば、是非とまでは言わないが、筆者なら都江堰を薦めるだろう。訪問者の方々には都江堰で、時を超えた人間の巧みを感じていただきたい。

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